真アウトプット奮闘記

アウトプットをしっかり出来る人間となり自己実現を目指す男の奮闘記

焼き餅と誕生日。

珍しく田舎から餅が届いたので。
食欲は無かったが食べないのも申し訳ないから。
焼餅にでもしようと箱から三つばかし取り出し。
オーブントースターに並べて焼いたみた。
すると餅の入ったダンボール箱

紙切れが入っていた。
それは僕の誕生日を祝う短い手紙だった。
僕さえ忘れていた今日のこの日を
親は忘れずに祝ってくれた。
餅を搗いている年老いた二人の姿を想像すると。
僕はなんともいえない気持ちになり。
焼き上がった熱い餅を

グイグイと口の中に押し込んだ。
押し込めば押し込むほどに

なんだか胸が苦しくなった。
僕は喉を詰まらせたのかほとんど嗚咽なのか。
よく分らないへんてこな音を鼻から発し。
自分を誤魔化すように更に焼餅を口に押し込んだ。
それはあまりに熱くて苦しくて可笑しかったので。
ついでに僕は妙に眠くなる薬の入った瓶を
力いっぱいゴミ箱の中に叩き込み。
コップに入れてあった水道水でゴクゴクと。
焼餅と鼻水とそれから僕の心の闇を
一気にゴクリと腹の中に流し込んだ。
それらはあまりに気持ちよく流れていったので。
よくは覚えてなんかいない筈なのに。
なんだかこの世に生を受けた瞬間と。
なんとも同じみたいな気持ちになった。
紛れも無く今日は僕の誕生日だった。

どうも!そんな僕がここにいます。

どうも!
かくれんぼで鬼になったのはいいが。
百数えている間にみんなに家に帰られた事のある。
そんな日の夕焼けが

目に沁みて仕方なかった僕がここにいます。


どうも!
当たりつきのアイスが

三連続で当たったのはいいが。
駄菓子屋のババアに疑いの眼差しで

舌打ちされた事のある。
そんな子供にさえ対等に

厳しい町で揉まれた僕がここにいます。


どうも!
校庭にあった木馬の遊具にたかる白蟻を

撃退していたのはいいが。
先生に木馬を壊していると見なされ

破壊主義者と罵られた事のある。
そんな勝負に勝って

試合に負けた僕がここにいます。


どうも!
授業中強烈に腹が痛くなり呻いたのはいいが。
ふざけた顔で授業を受けるんじゃないと

立たされた事のある。
そんなオオカミ少年扱いの僕がここにいます。


どうも!
シール欲しさにビックリマンチョコ

大量に買い込んだのはいいが。
チョコを食べ残し捨てた所を

近所のオヤジに見られ殴られた事のある。
そんな古き良き時代を生きた僕がここにいます。


どうも!
五時間目に身体測定を受けたのはいいが。
みんなトランクスなのに

僕だけ純白のブリーフだった事がある。
そんなバリバリ昭和テイストな僕がここにいます。


どうも!
毎週テレビでフランダースの犬

見ていたのはいいが。
おじいさんが死んじゃうくだりが悲し過ぎて

数ヶ月引きずった事のある。
そんなウブな心を持っていた僕がここにいます。


どうも!
公園でハトにニンジン(駄菓子)を

やっていたのはいいが。
予想以上に群がってしまい

怖くなって餌を放り出して逃げた事のある。
そんなハトが怖い平和主義者の僕がここにいます。


どうも!
友達のうちで夕飯をご馳走になったのはいいが。
カレーの中に牛肉が入っていて

衝撃を受けた事のある。
そんなカレーの肉は

豚コマ以外認めない家に育った僕がここにいます。


どうも!
友達の家で

スーパーマリオをやらせてもらったのはいいが。
友達より先にクリアしてしまい

友情にヒビが入った事のある。
そんな初代ファミコン世代な僕がここにいます。


どうも!
飼っている亀が冬眠したのはいいが。
春になる頃には亀を飼っていた事すら忘れ

餓死させた事のある。
そんなドジでノロマな僕がここにいます。


どうも!
移動教室のキャンプファイヤー

フォークダンスを踊ったのはいいが。
好きだった女子に手が湿っていると注意され

ショックを受けた事のある。
そんな多感で多汗な僕がここにいます。


どうも!
節分の日に神社で撒かれた百円を

這いつくばって掴んだのはいいが。
鬼の形相をしたババアに手を踏みつけられ

百円を強奪された事のある。
そんな本当の大人の怖さを知っている

僕がここにいます。


どうも!
バレンタインで女子に

チョコをもらったのはいいが。
中身をみたら

違う男子の名前が書いてあった事のある。
そんなスベリ止めな僕がここにいます。

 

どうも!
そんなこんなで

夢見る頃は過ぎたか過ぎぬか知らぬまま。
今日もウンウン踏ん張りながら

生きてる僕がここにいます。

僕はあるんだ。

床屋で散髪中マスターに
『あ!』って言われる事ってあるよね?
僕はあるんだ。


基本的にじゃんけんでパーを出す事を見抜かれ
パーマンと名づけらる事ってあるよね?
僕はあるんだ。


意識的にグーを出すようにしたら
ドラえもんと名づけられる事ってあるよね?
僕はあるんだ。


進級時に張り出されるクラス分け表に
名前を載せ忘れられる事ってあるよね?
僕はあるんだ。


情報漏洩に気を使い

シュレッダーで書類を処分していたら
『君にそんな重要な仕事は任せていないよ。』

と言われる事ってあるよね?
僕はあるんだ。


妹の子供に『なんで結婚しないの?』なんて
純粋な瞳で聞かれる事ってあるよね?
僕はあるんだ。


フィリピンパブで
『ワタシノシンセキソックリデスゥ。』

と言われる事ってあるよね?
僕はあるんだ。


パンにごはんですよ!を塗った
ごはんじゃないですよ!が

おやつだった事ってあるよね?
僕はあるんだ。


百円ショップに入ったら
『業者の人は裏口から入って!』と

冷たく言われる事ってあるよね?
僕はあるんだ。


百貨店で
万引きGメンに執拗に尾行される事ってあるよね?
僕はあるんだ。


リモコンの電池が無くなって
コロコロ回してしのぐ事ってあるよね?
僕はあるんだ。


電気を消そうと紐を引っ張って
照明ごと落っこちてくる事ってあるよね?
僕はあるんだ。


帰宅中前をゆく女性に警戒され
何度も後ろを振り返られる事ってあるよね?
僕はあるんだ。


熱弁を振るう友の口から飛び出したツバキが
彼の熱情の如く

顔面にヒットしてくる事ってあるよね?
僕はあるんだ。


五月の風さえ冷たく感じる僕の心よ
まだ余裕かまして笑える余地はあるよね?
あっても無くても敢えてこう答えよう。


僕はあるんだ。

ブーツの中のにおいを嗅いだ。

寝ている隙にブーツの中のにおいを嗅いだ
気が遠くなるという言葉の意味を知った
君を好きな気持ちに変わりは無い

 

寝ている隙に鼻毛を抜いてみた
殺すぞゴラァと胸ぐらをつかまれた
君を好きな気持ちに変わりは無い

 

寝ている隙に携帯の電話帳をみた
僕の番号が仕事関係というグループに属していた
君を好きな気持ちに変わりは無い

 

寝ている隙に布団を掛けなおしてあげた
疲れてるからやめてといわれた
君を好きな気持ちに変わりは無い

 

寝ている隙に煙草を買いに行った
帰ってきたらドアにチェーンがかかっていた
君を好きな気持ちに変わりは無い

 

寝ている隙に花に水をあげておいた
この花強いから水あげなくても

枯れないんだよと自慢げだった
君を好きな気持ちに変わりは無い

 

寝ている隙に部屋の掃除をした
誕生日にあげたプレゼントが

開封で放置してあった
君を好きな気持ちに変わりは無い

 

寝ている隙にインターネットの履歴をみた
『パートナーをストーカーにしない別れ方』が

検索されていた
君を好きな気持ちに変わりは無い

 

寝ている隙に薬指から指輪を外しておいた
無くなっている事をまったく気にしていない
君を好きな気持ちに変わりは無い

 

寝ている隙に出ていくことにした
この小さな背中を

僕ではない誰かが守ってくれる事を願った


君を好きな気持ちに変わりは無い

焼きそばパン。

コンビニの入口脇で。
ホームレス風情のおじさんが。
焼きそばパンを貪り食う姿を見た。

よく分からないけれど。

こんな光景を見るといつも。
僕は胸を締めつけられてしまい悲しくなる。
でもおじさんは強力に腹が減っていて。
ブルーシートの青い家に帰るまで

我慢出来なかったから。
ここで食べているだけかもしれない。
だけれどどうしようもなく悲しい。

よく分からないけれど。

僕が一億円持っていたら一千万円あげたい。
でも僕は今一万円持っているけど

千円をあげれない。
だから僕は一億円持っていても

一千万円あげれないだろう。

そんな人間だ。

優しさなんて分からない。
愛しさなんて分からない。
正しさなんて分からない。
悲しさなんて分からない。
だけれどどうしようもなく悲しい。

よく分からないけど。

僕も焼きそばパンを買って家に帰ろう。
家に帰って焼きそばパンを貪り食おう。
この胸苦しさをどうか。
焼きそばパンを喉に詰まらせた苦しさで。

相殺しよう。
そうしよう。

よく分からないけど。

多摩川沿いのブルーシートの

青い家々の脇にある桜が。
この世のものとは思えないほど

美しく咲き乱れていたらいいのにと。

百年経って千年経って。
僕らの身体の養分が

あの桜の花びらに変わればいいのにと。

この焼きそばパンが

おじさんの焼きそばパンよりも。
むちゃくちゃ不味かったらいいのにと。

雲。

朝が来たので洗面台で顔を洗っていたら
排水溝の中から声がしたので
どうしたのですかと尋ねると
流されるままに生きていたら
ここにたどり着いていましたと返事があった
申し訳ないですが僕は時間が無いので
助ける事が出来ませんと告げると
はい分かっています
私もあなたの場所にいた頃は
そういった余裕は一切ありませんでしたので
あなたの気持ちを痛くお察ししますと返事があった
僕は手を滑らせた振りをして
聞こえてくる声を排水溝の奥へ流してしまうと
とにかく大変そうな顔をして先を急いだ

アパートのドアを開き駆け足で通りへ出ると
電柱の脇のゴミ置き場から声がしたので
どうしたのですかと尋ねると
いらないものを全て捨てていたら
最後にいらなくなったものは

自分でしたと返事があった
出来ればあなたと一緒に

失くしたものを探したいのですが
今日はどうしても時間が無いので
明日にして下さいと告げると
はい分かっています
私もあなたと同じ時を過ごした事があるので
あなたの気持ちは当然であると認識していますと

返事があった
僕は捨ててきた心の置き場所を

思い出せない振りをして
聞こえてくる声をゴミ置き場の奥へ押し込むと
致し方無さそうな顔をして先を急いだ

駅へ向かう道の途中
地面から声がしたので
どうしたのですかと尋ねると
土の中で7年間必死に生きてきたのですが
いざ外へ出ようとしたら上から

アスファルトを張られてしまったようで
どうやら日の目を見る事が出来なくなりましたと

返事があった
僕に力があるのなら

こんなアスファルト剥がしてあげたいのですが
両手には僕を守るだけの力しかないので
どうしてあげることも出来ませんと告げると
はい分かっています
あなたも私も同じ境遇ですから

どうぞ先を急いで下さいと返事があった
僕は夏空に響く蝉の声に

みっともない臆病さを潜ませながら
試練でも背負い込んだ顔をして先を急いだ

僕は今日も僕にとって大切なものから

簡単に目を逸らしてしまうくせに
それでも大切なものを探すことで

精一杯の顔をして先を急いでいる
大切なものはいつもきっと

過去でも未来でもなくここにあるというのに


でもそれでもいいんだと思うことにする
立ち止まって空を見上げてみれば
雲はどこまでも自由にゆるやかに
果てしなく流れゆくことをまだ忘れてはいないから

心拍数。

やめたいと言うと
やめちゃいなと君は言う
そんなに簡単じゃ無いよって言うと
いつも簡単だよと返される
いつか君は僕をやめるのか
いつも簡単みたいだから
とても恐ろしい
一先ず君の胸に耳をよせて
心拍数を把握しておく事にする


一緒だねと言うと
一緒じゃないよと君は言う
どうしたら一緒なのって聞くと
すごく難しいよと返される
いつから僕らは別々なのか
すごく難しいみたいだから
とても哀しい
一先ず君の背中に指をあてて
足りないものを探り当ててみる


もういくよと言うと
気をつけてねと君は言う
君はいかないのって尋ねると
どこまでも深いからと返される
いつからか溝の底はみえなくなった
どこまでも深いみたいだから
とても埋まらない
一先ず君の額に口づけをして
残された時の隙間を埋めてみる


嘘だよねと言うと
ほんとだよと君は言う
空は嘘みたいな青だよって言うと
ぜんぶ零れちゃったよと返される
いつのまに手を離してしまったのだろう
ぜんぶ零れたみたいだから
とても還れない
一先ず君が好きな突拍子も無い嘘をついて
僕の好きな君の笑顔に最後の別れを告げた